たまスーパー

「主任、牛肉の在庫が
切れそうなんですが…」

『おお、相田くん!
ちょうどいい所にきた!』

「どうしたんですか?」

『まぁ、そこに掛けたまえ』

「はぁ…なんでしょうか?」

『あれから…
記憶の方はどうだね?』

「…それが
まだ…戻りません」

『始めから…
記憶など無かったとしたら?』

「ど、どういう事ですか?」

『私は…
これから君に
すべてを打ち明ける!
ある事ない事!』

「ある事だけにしてください…」

『まぁ、座りたまえ!』

「座ってます」

『どこから話せばいいかな?
そう…3年後の話だ…』

「出来れば…
過去の話をお願いします」

『いきなりこんな話をして
君にショックを
与えるといかんので…』

「…ごくり」

『まず…
クローンとは、どんな物かを
説明しておきた…』

「えっ?
僕…クローン人間なの?」

『…を、分解させ
細胞の増殖を増進さ…』

「ちょ、ちょ、ちょ、おいっ!」

『何だね?』

「じょ、冗談…です…よ…ね?」

『冗談でこんな事…
言う程、暇じゃないんだよ!
昼食も、まだなのにっ!』

「そ、そんな話
どうやって信じろって
言うんですか?」

『私のロッカーを見てみろっ!』

「こ…これは?」

愛妻弁当だ♪』

「昼食の話じゃねぇよっ!」

『えっ?』

「クローンの話ですよ!
だいたい…
あなた、何者なんですか?」

『まぁ、座りたまえ!』



「座ってます」

『私は…
ただのスーパーの主任ではない!』

「…ごくり…」

『私は…
何か知らんけど
頭の良い人たちだけで作られた
研究グループの主任なのだ!』

「その言い方にまったく
知性を感じられませんが…」

『君は…
細胞培養機の中で…
わずか3日で誕生した
クローンなのだよっ!』

「さ、細胞…培養機ですって?」

『培養機の中での1分は
我々の時間の1時間…
いや逆だったかな?
1時間が1分?いや2分…?』

「…あのぅ…」

『えぇと…細胞が分裂…5時間…
アレが、こうなって…
つーかどーでもいーけどっ!』

「諦めんなよっ!」

『私は、科学が苦手なんだよっ!』

「頭の良いグループの
主任じゃねぇのかよっ?」

『私は、プレゼンの能力を買われて…』

「そっちも、
全然なっちゃいねぇよっ!」

『相田くん!
まぁ、落ち着いて…座りたまえ!』

「座ってんだよっ!
こっちは、さっきからよっ!」

『そんな訳で
君の過去の記憶は…
存在しないのだよっ!』

「ちょ…待ってください!
じゃ、元の俺は?」

『アイダー1号の事か…』

「何だよ、その
仮面ライダー】みたく言うなや!」

『アイダー1号は
もう…この世にはいない!』

「何だとっ?
き、貴様ら、いったい何を!
俺は、こんな研究…
絶対に認めないからなっ!」

『ふっふっふ…遅い!
もう遅いのだよ!アイダー2号!』

「その呼び方やめろっ!」

『既に、大量生産のメドもついている』

「ま、まさか?
大量にクローンを作って
戦場に送り出すつもりかっ?」

『…何を…勘違いしている?』

「えっ?」

『我々が開発したのは
【培養機フエ〜ル君】の方だ!』

「えっ?
じゃ…クローンは?」

『実験の副産物だよ!』

「はぁ?」

『アイダー1号は
実験の犠牲になってしまったのだ!』

「実験って何だよ?
大体、実験はネズミとかでやれよっ!」

『ネズミだよ』

「はぁああああああああああ?」

『アイダー1号は
私のペットの
ネズミだったのだっ!』

「何でだよっ!
僕は、人間ですけどっ?」

『うん…
途中で遺伝子が
組み換わっちゃったのかなぁ?』

「種族が変わってんじゃねぇかっ!」

『ともかく…君は、これから…』

「…ごくり…
ぼ、僕は
これからどうすれば?」

『君には…
今まで通りの
生活をしてもらう!』

「えっ?」

『君が
遺伝子組み換えクローンだと
世間に知られる訳には
いかないからねっ!』

「…だったら…」

『えっ?』

「…だったら…そんな事ぼくに
教えるなよぉおぉおぉおおおお!」

『ごめん♪さ、仕事仕事♪』

「さ、仕事仕事♪じゃなくて…」

『あっ、
牛肉の在庫が切れそうなんだっけ?
じゃ【培養機フエ〜ル君】で♪』

「ああ…はい!
…って
絶対ダメーっ!」





2〓たまこ〓号